実戦派を育てる図解不定期連載 第1回

在庫処分記念特別企画

「いちいち起動時に周辺機器のスイッチを入れるのはかったるいけどどうしまし

ょう作戦」

中村隆生



■はじめに  個人的な話ですが、去年デジカメを買っちゃいました。富士フイルムの 2900Z です。230 万画素です。もー電脳倶楽部に写真を載せたくてうずうずしていたん ですが、ちょうど頃合良く電脳倶楽部が CD-ROM 化されました。  そこで、今回から不定期に(つまり、俺が忙しい時はできないということです が)、写真入りでハードウェア関連の図解記事をお送りすることになりました。 みなさんどうぞよろしくお付き合いのほどをお願い申し上げる次第でございます。 ちなみに今回の画像は 375K バイトあります。FD 版の時代なら速攻でボツです な。  ところで、みなさん、はんだごてぐらいは握ったことがありますね? 男子の 皆さんは中学校でラジオとかインターフォンとかを組み立てたことがあると思い ます。今回以降、「はんだ付けは当然できるもの」として、その辺すっとばして 解説しますので、そのつもりでお願いします。  しかし、はんだ付けについては、いずれ後ほどねっとりと解説した方がいいの かも知れませんね。  それから工具とか部品について。今回使う工具は、はんだごて、はんだ、ラジ オペンチ、ワイヤーストリッパー(皮むき器)といったところですが、こういう のは通販でも揃います。たとえばアールエスコンポーネンツとか(個人で申し込 めるかどうかは分かりませんが)。 アールエスコンポーネンツ http://rswww.co.jp 電話 045-335-8888
■今回のネタ  で、初回ですが、連動電源キットの特売をショップ満開で始めましたので、な んか商売臭がぷんぷんしますが「連動電源キットの組み立て」を、順を追って説 明します。 ●連動電源とは?  X680x0 の背面のコンセントは、単に AC 100V が出ているだけですから、ここ に周辺機器をつないでも、個別にスイッチを入れるしかありませんでした。これ は大変面倒です。  そこで、X680x0 の内部電源(Vcc に 5V が出ています)を見張って、これが ON になった時に、AC 100V を導通させる回路を組んでやれば、比較的簡単に連 動電源が実現できます。回路を組むもなにも、5V の入力で AC 100V の開閉を行 ってくれるリレーなぞ、秋葉原や日本橋にいけば死ぬほど売ってますから、キッ トなんてなくても、ある程度の知識があれば即作れる訳です。実際、私も連動電 源回路を自作して、現にこのマシンで使っているぐらいですから。  満開でキット化するにあたっては、ケース以外はすべて揃うようにしました。 また、X680x0 が起動したかどうかは、ジョイスティック端子(1と2のどっち でもいいんですが)の電源端子間(つまり、Vcc と GND ということです)を見 張っています。ただ、それだけではジョイスティック端子をふさいでしまうので、 X680x0 へ接続する端子だけでなく、ジョイスティックそのものをつなぐための 端子も備えています。あとタップもついています。 ◎キットの中身  しかし今では、あるコンセントに電流があることを検知して、他のコンセント を連動させるタイプの連動コンセントが市販されていますから、最初の値段では かなり無理がありました。原価から言って仕方なかったのですが、MK-CK シリー ズの廃止が決定したので、在庫処分ということでかなりの安値(4分の1)で販 売することになった訳です。この値段ならまあリーズナブルなのではないかと思 いますが、おひとついかがですか。あと 18 個ありますので。
■組み立てる  それでは、順を追って組み立てていきましょう。なお、作例は MK-CK002A の もので、MK-CK002 では部品とかが細々と違うかも知れません。  それから、このキットでは AC 100V を扱います。気を抜けば簡単に感電でき ますので、そのあたりを十分注意して製作して下さい。はんだごては、強めのや つ(30W とか)を使うと良いです。  最初にタップを作ります。まず、AC ケーブル切断からはじめます。ケーブル は 3m のものが入っていますが、タップ用に 1m ぶん切断します。 ◎切断する  そして、短い方の線をむきます。作例ではワイヤーストリッパーを使っていま すが、もちろんカッターナイフなどで代用しても構いません。むいた後は、導線 をよじっておくといいです。 ◎むく  次に、タップをバラします。外すのはビス1本だけで OK です。バラすと、ワ イヤーを接続するためのビスが見えます。このビスをいったんゆるめて(外さな くてもいいです)、そこに導線をビス止めします。この配線には極性はありませ ん。いや、ものすごく厳密に言えば本当は極性があって、オーディオ機器とかで は気にした方が良いんですが、まあ今回は気にしなくていいと思います。 ◎ビス止めする(その1)  もう一方にもビス止めします。 ◎ビス止めする(その2)  配線を通すための溝がありますので、そこに配線を這わせます。そうしないと タップのふたが閉まりません。ちゃんとふたが閉まったら、吊り金具を裏に付け て(この金具には方向があります)、ビス止めすれば、タップの完成です。 ◎ビス止めする(その2)  次に、基板を組み立てます。順番は比較的どうでもいいんですが、とりあえず SSR を付けます。SSR については、説明が長くなるので、後ろの方に「リレーに ついて」と題して、まとめておきました。基板には裏表がありますが、この文章 で言う「表」というのは「部品面」、つまり部品の形状とか部品番号が白く印刷 してある方です。ちなみに、裏面は「はんだ面」と呼びます。  SSR には取り付けの方向がありますから、写真を参考にして下さい。まあしか し、基板の穴は、SSR の足間隔に合うよう空けてありますから、逆挿し事故はな いと思います。ただ、2種類の SSR に合うように設計してありますから、穴の 数が多くて、どれに挿せば良いか最初は悩むかも知れません。  ちなみに、逆挿しすると、たぶん SSR が吹き飛びます(実験したことがない ので、本当にどうなるかは分かりませんが)。 ◎SSR を付ける  取り付けたら、裏側からはんだ付けします。 ◎SSR をはんだ付けする  この基板には、100V が流れる場所が多いですから、はんだ付け不良には特に 注意して下さい。  次に ZNR を取り付けます。ZNR は普通バリスタとか言いますね。何のための 部品かというのも、後ろの「リレーについて」に一緒に書いておきましたので、 あとで読んでみて下さい。ZNR には極性(方向)はありません。2通りのサイズ に対応していますので、穴も2通り空いています。合う方に挿して下さい。 ◎ZNR を付ける  次に、フューズホルダを付けます。まだフューズは取り付けないで下さい。方 向がないように見えますが、実はあります。横っちょに突起が2個出ているので すが、その突起の方向が基板に印刷してありますから、それを合わせて取り付け て下さい。 ◎フューズホルダを付ける  100V 系のパターンはどこもそうですが、特にフューズホルダは熱が逃げやす くて、はんだ付けしにくくなっているので、注意してはんだ付けして下さい。し つこいようですが、ここをマジで AC 100V が流れるんですぜ旦那。注意して、 注意しすぎということはないです。 ◎はんだ付けする  これで、部品の取り付けは完了です。 ◎一段落したところ  次に、ジョイスティック側のケーブルをはんだ付けします。まず皮をむきます。 実はこれが一苦労なんですが。皮をむいたら、導線にはんだを流し込むようにつ けてやると、後で基板に付ける時に楽でいいです(これを「予備はんだ」と言い ます)。 ◎皮をむいているところ  ちなみに手の出演は私(中村)、撮影はみかぜ君であります。まあそんなこと はどうでもいいですね。  むいた線を、取説通りに基板にはんだ付けしていきます。間違ってしまった場 合は、はんだ吸い取り線で吸い取ってやり直しです。実際、作例を作っている時 に失敗してしまったので、はんだ吸い取りの模様をご紹介します。 ◎失敗したところ  吸い取り線はめちゃめちゃ熱くなりますから、素手で持つとやけどします。ラ ジペンでつまみましょう。  満開の室内はあんまり明るくないので、色がよく分からないかも知れませんが、 配線の色も取説に書いてあります。 ◎配線を付けたところ(その1)  同様に、68側への配線をはんだ付けします。これは、さっきのジョイスティ ック側配線の工作と同じなので省略します。 ◎配線を付けたところ(その2)  次に、AC プラグを取り付けます。極性はありません。ここの端子間は絶対に ショート(接触)しないようにはんだ付けして下さい。 ◎配線を付けたところ(その2)  最後に、タップをはんだ付けします。ここもショートには気を付けて下さい。 これで一応完成です。 ◎一応完成  ところで、くどいようですが、本キットでは 100V を扱いますので、絶縁に注 意して下さい。専用のケースを買ってきても良いですが、小さいタッパーがあれ ば加工しやすくて楽です。ここではあくまで作例ということで、ぞんざいに名刺 ケースに入れてみました。この状態で、フューズのところを交換できるようにし て、シリコンゴムかなんかでバキバキに固めてしまえば、感電事故の心配はない ですね。ただ、固めてしまうのは、動作試験が終わってからにして下さい。 ◎ケースに適当に入れたところ  あとは、AC プラグを家庭用電源(X680x0 の背面からでもいいですが)につな いで、周辺機器をタップにつなぎます。当然ですが、この時周辺機器のスイッチ はあらかじめ ON にしておかなければ、連動はしません。そして X680x0 と(あ れば)ジョイスティックへの接続が終われば、設置完了です。動作試験をして下 さい。このキット、部品点数がすげえ少ないので、はんだ付け不良とか部品の逆 挿しとかがなければ大丈夫だと思います。
■注意点  実際の注意点については上の文中で書きましたので、基本的にはそれだけなん ですが、この回路には周辺機器が使う電流がすべて流れますし、実際に流せるの は 3A までです。  たとえば、つないだ機器の消費電力が合計で MAX 300W だとしたら、 300W ÷ 100V = 1A で、1A ということになります。今回使用している SSR は 3A まで耐えられます。 フューズは 4A のものが入っています(つまり、4A 以上流れた時にはフューズ が切れます)。
■リレーについて  このキットでは SSR を使っていますが、この SSR というのはソリッド・ステ ート・リレーの略です。昔のリレーというのは、簡単に言えば電磁石でスイッチ を切り換えるというもので、カチカチという作動音がしたり、可動部があるので 機械的な寿命があったり、大きかったりしていたわけです。  そこで「可動部のないリレー」ということで開発されたのが SSR です。可動 部がないので、さっきの反対で機械的な寿命はありません。また高頻度のオンオ フができます。用途に応じて、中身の構成は何種類かありますが、フォトカプラ で受けてトライアックや FET をオンするようになっています。フォトカプラで 受けるので、ここで絶縁できるという訳です。  それから、このキットの回路にはバリスタが入っていますが、これはサージ吸 収用です。サージというのは、雷が落ちた時などに、電源ラインに瞬間的に異常 な高電圧がかかることです。で、バリスタというのは、単発的にぶわっと異常な 電圧がかかったときに、それを吸収するための部品です。
■次回の予定  X680x0 の電源ユニットは、そろそろ寿命を迎えているものが多いようです。 しかし、マザーボードはまだ生きていることが多いため、別に電源を用意してや ればすんなり直ったりします。  そこで、次回は、  「うちの68の電源がぶっ壊れちゃったにょー困ったにょー大作戦」 と称して、なぜ電源がぶっ壊れるのかとか、具体的な配線はとかいうあたりも含 めてお送りします。実際は MK-CC011 の宣伝なんですけどね。  それから、「こんなのをやってほしい」という要望がありましたら、読者葉書 に書くか、メール(nakamura@mankai.co.jp)で送って下さい。無茶なのでなけ れば極力やります。あと、ハード工作のコモンセンス解説なんかもやりたいです ね。俺はハードに強いユーザーを増やしたいんです。それではしーゆーあげん。 (EOF)